愛媛大学 農学部 生物資源学科 生物環境保全学コース愛媛大学 農学部 生物環境学科 環境保全学コース 環境計測学研究室

研究テーマ

将来の「持続可能な社会」構築に向けた‘グローカル(Global & Local)’な環境汚染問題に取り組む

21世紀は食料の安定供給困難、資源エネルギーの需要増大・枯渇、環境問題の複雑化・深刻化などが絡み合う多くの課題が山積しています。将来の環境悪化を防ぎ‘持続可能な社会’を構築にするには、多様化する環境汚染の監視・早期発見、モニタリング技術の開発、リスク評価、影響予知システムの構築が必須です。私達の研究室では、わが国でいち早くPCB汚染、ダイオキシン汚染を明らかにした研究実績とノウハウを活かして、化学物質の潜在的なリスクを監視・評価・予測し、ヒトの健康や生態系を守る研究活動を展開しています。
残留性有機汚染物質(POPs)はストックホルム条約(POPs条約)によってすでに、廃絶・削減が進められていますが、難分解性・高蓄積性・長距離移動性・有害性といった特徴を持つことから国際的・長期的なモニタリングと生態影響評価が必要です。そこで、POPsやその候補物質による‘グローカル(Global & Local)’な汚染の実態、ゆくえおよび生態リスクの解明を行っています。また、アジア/アフリカ等開発途上国・振興工業国では不適切な廃棄物の処理・資源リサイクルによって深刻な環境汚染やヒトへの有害物質曝露が発生しています。ベトナムやインド、アフリカ諸国の化学汚染実態の解明とヒトへの曝露リスク評価に関する研究を行っています。さらに、バイオアッセイと機器分析の統合による‘影響指向’の環境モニタリング・曝露評価と未知有害物質の探索・同定、ネオニコチノイド系農薬や除草剤、防汚剤などの利用による河川・沿岸環境の汚染と水圏生態系に対する影響評価にも取り組んでいます。

生態毒性影響試験と環境リスク評価および生物応答を用いた排水管理手法の開発と適用

近年、環境中のマイクロプラスチック(MP)を介した化学物質による生物への影響が新たな環境問題として関心が高まっています。しかし、MP を介した化学物質の挙動について、定量的に明らかにした報告は少ないのが現状です。私たちのラボでは、MPのモデルとしてマイクロビーズ(MB)を用いて、化学物質のMBへの吸着及びMBからの溶脱を検証しています。また、化学物質がMBの有無によって生物濃縮係数に差が出るかどうか、 生物種間で濃縮が起こるかどうか濃縮試験の実験を行っています。
現在、工場や下水処理場から放流される排水は、ヒト健康や生活環境保全のため排水基準によって規制されています。しかし、年々増加する新規化学物質を含めた、様々な化学物質による生態系への影響が懸念されています。さらに、複数の物質による複合影響は、個別物質の生物影響や化学分析だけでは評価することは出来ません。そこで、魚類、ミジンコ、藻類などの水生生物を排水に直接ばく露し、生死や繁殖、生長といった生物応答によって排水の相対的な影響を評価・管理するシステム(Whole effluent toxicity:WET:全排水毒性)を用いた排水管理試験法の検討を行っています。

ペット動物や野生動物に蓄積した有害化学物質の汚染実態と代謝機構の解明およびリスク評価

私たちの身の回りには多くの化学物質が存在し、摂食や接触、呼吸などを通して様々な化学物質を生体内に取り込んでいます。それはヒトだけでなく、生活圏を共にするペット動物も同様に化学物質を取り込んでいると考えられます。とくに、難燃剤や殺虫剤として使用される化学物質は、家具や家電、防虫剤として室内で使用されており、私たちの身近に存在しています。ハウスダストや餌に含まれる化学物質を取り込むことによってペットの健康への悪影響が心配されており、病気を引き起こしているかもしれません。
しかしながら、ペット動物の代謝機構は不明な点が多く、化学物質の取り込みによってどのような影響があるのか分かっていません。我々はペット動物に注目し、化学物質の代謝能を明らかにすることと健康への影響を評価することを目指しています。
さらに、野生動物(陸棲哺乳類や鳥類、昆虫等)に蓄積する様々な農薬や殺鼠剤、生活関連物質などを測定し、どのような化学物質が、どの組織に、どれくらいのレベルで存在するのか、また、これらの化学物質がどのように代謝され、排出されていくのか調査することで、化学物質による環境化学汚染から生態系を保全していきたいと考えています。